サッチダナンダ
ババジのクリヤー・ヨーガにおいて、イニシエーションの重要性は、見過ごされがちである。イニシエーションは神聖な行為であり、イニシエーションにおいて、真理を知るための手段を初めて体験するのである。その手段が、クリヤーと呼ばれるヨーガの技法であり、真理は永遠無限なる一者への入り口である。真理は呼び名や形を超えているため、言葉や記号で伝えることは出来ない。しかし体験することは出来るので、自らの真理の体験を分かち合ってくれる教師が全ての人に必要なのである。教師は、生徒が真理を自らの内で体験するための手段、ヨーガの技法という手段を提供するのである。
イニシエーションの間、受け手は気づかなくても、イニシエーター(伝授者)と受け手(生徒)との間には常にエネルギーと意識の伝導が行われているのである。生徒が疑問や疑いに満ちていたり、気が散っている場合には、効果的な伝導は行われない。そのため、イニシエーターは妨害が最小限になるように、あらかじめ生徒の準備を整えたり、環境をコントロールしたりする。実際、イニシエーターは生徒の意識を自分の意識に取り込み、生徒のメンタル的、ヴァイタル的な限界線を拡大させるのである。イニシエーターと生徒の間のメンタル的、ヴァイタル的な境界が溶けるようなものである。これによって意識が上位の界層に移行するのが非常に楽になるのである。こうしてイニシエーターは生徒を魂の体験へと導くのである。大抵の人の場合、魂の経験はベールで覆われてしまっているのである。生徒は自分の意識が上げられたおかげで、初めて何らかの潜在的意識や潜在的能力を垣間見るのである。弟子のクンダリーニを上昇させる理由は、これなのである。初めての場合、あまり劇的でないことがほとんどである。しかし、学んだことを実践に移す生徒の熱心さによるけれども、時を経て徐々に劇的になっていくのである。
イニシエーションが効果的に行われるためには2つのことが必要である。生徒の準備が出来ていること、真我を悟ったイニシエーターが存在することである。生徒のほとんどは後者すなわち完璧なグルを見つけることを重要視し、自らの準備についてはほとんど気に掛けない。「自分のためにそれをしてくれる」人、つまり真我実現、あるいは神実現を与えてくれる人を探そうとする人間性の欠点によるものだろう。グルが正しい方向を指すとき、生徒はその方向に進む決心を自らしなければならない。頭では決心しているけれども、人間性のために気を散らしたり、疑念や欲望にはまってしまうことが多い。だから、たとえ完璧な教師を見つけたとしても、信念、忍耐、誠実さ、根気のような質を生徒が身につけていなければ、イニシエーションはコンクリートの歩道に種を蒔くように、無駄なものになってしまうのである。
こうした理由により、伝統的にイニシエーションは準備の出来た者、時には何年もの準備期間を経た者だけに与えられていた。初めのイニシエーションは多くの求道者に与えられるかもしれないが、より高度なイニシエーションは弟子としての質を身につけた者だけに与えられた。イエスが言っているように「呼ばれる者は多いが、選ばれる者は少ない」、弟子道に必要な厳しい要件を満たす者はほんのわずかである。
ディボーティ(熱愛者)とは、道や教師を求めている者である。道や教師を見つけるまでには非常に長い期間を要するかもしれない。1人の教師、1つの道に打ち込む準備がまず出来なければならないのである。品物を比べる買い物客のように、少しずつ見たり、聞いたり、体験したりしてある教師から別の教師へと動き回る。この段階を経てようやく、弟子となり自らの教師が示した霊的訓練に打ち込むようになる。霊的訓練の結果が現われるまでには長い期間続ける必要があるので、生徒は訓練、忍耐、教師の援助、神の恩寵の効果を信頼する必要がある。真の教師はいつでも生徒の要望にこたえる準備や、生徒の要望にこたえることの出来る人物を見つける準備が出来ている。神の恩寵に自らを開く方法を知っていれば、いつでもそれを受け取ることが出来る。したがって、問題なのは生徒の信念と忍耐である。教師あるいはグルは、イニシエーションを通して生徒の成長を後押しし、霊感や刺激を提供することが出来る。しかし生徒は信頼と粘り強さを持たなければならない。
イニシエーションを受けずに技法を学んだとしたら、それは効果のあることだろうか? これまで話したことを理解すれば、答えは明らかに「効果は無い」である。ゆえに、書籍や、自らが真理の体験をしていない偽りの教師から技法を学ぼうとしても、霊感は与えられないのである。イニシエーターと受け手との間に起こる意識とエネルギーの伝導には技法に力を与える神聖なものがあるのである。こういった訳でイニシエーションの伝統は世代から世代へと効果的に真理の実体験を伝えることが出来ているのである。イニシエーションの強みは、熱心に修練を積み真理を悟った者たちの力と意識にあるのである。イニシエーションで学んだことを規則正しく熱心に実践し、イニシエーションに敬意を表すことは、自らの高位我に敬意を表すことなのである。
December 2002 Copyright Marshall Govindan. All rights reserved.
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