恐れと生気体の統御


M.G.サッチダナンダ

恐れは、不安・狼狽・競争心・肉体の緊張・自信のなさ(全くないもの状態から多少ない状態まで)・疑念・臆病・内気・罪悪感・防衛意識過剰のような様々な形態を取ります。恐れは、我々の思考、行動、発言の多くに影響を及ぼします。そのため、我々は日常生活の中で苦しみを味わいます。恐れや他の否定的な感情は内分泌系のホルモンのバランスを乱します。これによって、徐々に病気に対する免疫が低下し、ストレスに関係する肉体的、精神的病にさらされてしまいます。あまりにも頻繁に、我々は天気と同じようにこれに対して自分ができることはほとんどないと思い込んでしまいます。特に年を取るにつれて、そのことが癖になってしまい、これに対抗するための努力をしなくなり、希望さえ持たなくなります。しかし、総合ヨーガの実践を通して、生気体の変容させることもその一部となっているヨーガの実践を通して、徐々に恐れを取り除けるようになり、そうすることによって感情が座す生気体を統御できるようになるということが分かってきます。 その方法はこれです。

第一段階:恐れ、つまり恐れがどのように、そしてなぜ我々に影響を及ぼすのかを理解することです。ヨーガの実践者として、皆さんは5つの体、つまり肉体・生気体・精神体・知性体・霊体についてよくご存知です。生気体は感情と欲望の座です。感情と、行動や発言への衝動はこの体を通過します。生気体は肉体よりもやや精妙です。生気体は肉体に生命を吹き込みます。生気体には独自の構造があり、数千の気脈であるナーディー、霊的中枢であるチャクラがあります。チャクラからナーディーが放射状に広がっています。生気体は最初のオーラを構成します。透視ができなくてもオーラを見ることはできます。休養十分で、健康であり、定期的に運動を行い、バランスが取れた食生活をしている人の周りには明るい光が見えます。そうでない人の周りはどんよりした灰色であり、赤や茶色がかっていることがあります。生気体は、想像力や記憶の活動の場である精神体よりも粗い体です。生気体と精神体よりも精妙なのが知性体であり、ここでは抽象的な思考、概念、言葉が生じます。5つの体は互いに浸透し合っています。一つの体に動きが生じると他の体に連鎖反応が生じます。生気体から生じる衝撃の流れを理解することが、恐れや他の否定的な感情を統御する上での第一歩です。しかし、5つの体とその動きをただ単に区別するだけでは長期的な効果は望めません。これは単なる概念にすぎず、実際の人生と本棚の本ほどの違いがあり、生活に追われているとたいてい忘れてしまいます。第二段階は瞑想であり、現在という瞬間に入れるようになることです。ここは、5つの体の相互作用に気づくことができる場所です。これらの違いに気づくことは、識別、サンスクリット語ではヴィヴェーカと言われ、この識別によって人は賢明になります。この識別が存在するのが霊体、至福の体です。第三段階は生気体をエゴから引き離すことです。

第二段階:気づきと識別を発達させること
ヨーガの実践者として皆さんは、識別という道具を日常生活で応用できるという優位な立場にいます。恐れや否定的な感情のためにあとで後悔するような行動や発言をしたり、心を乱してしまう前に気づくことができます。様々な方法でもっと気づきをもたらすことができるように自らを訓練することができます。数回深呼吸をすることによって、生気体を落ち着かせることができますし、その後に直ぐプラーナヤーマを実践することによって、生気体を強化し、活気づけ、怠惰や疲労から逃れることができます。アーサナを行う時には、瞬間瞬間に生じる感覚に注意を集中しながら行うのです。初めてそのポーズをしているかのように行います。その結果、気づきが拡大します。ポーズとプラーナヤーマを習慣的に行うことによって、落ち着きが増し、眠りに落ちることなく深い瞑想に入ることができるようになります。深い瞑想に習慣的に入り、集中し、精神体と生気体の絶え間ない動きから距離を取ることによって、気づきが増し、このおかげで精神的に安定し、日常生活で生気体に生じる衝動、感情、欲望から離れていることができるでしょう。これらを定期的に実践することによって、深く根付いた習慣が徐々に取り除かれます。これらの習慣のために生気体は、恐れ・欲望・怒り・プライドのような感情に反応してしまっているのです。これが生気体を浄化し、統御する方法です。定期的にポーズ・プラーナヤーマ・瞑想を実践すること各腺が最適に機能し、幸福と、日常生活上のストレスに対処するための最適な状況がもたらされます。

生気体の観点から見た人生

生気体の動きの例を見てみましょう。

  1. 寂しさを感じたため、友人に電話をし、互いの感情を言い合ったり、笑い合ったりする
  2. 腕時計を見ると、約束の時間に遅れそうで、心配になり、速足になったり、スピードをあげて運転し始める。
  3. どうして重要なことをやらないのかと相手に言われ、防衛意識過剰になって話し始める。
  4. テレビを見て、ドラマの中の感情に浸ったり、ニュースに興奮したりする。
  5. 税務署からの手紙や、予想外の請求書を受け取り、汚い言葉を発してします。
  6. 人を待っている時、相手が現れないので、指が神経質に動き始め、不安になる。
  7. 長い1日の仕事が終わり、家に着くと、体に疲労を感じ、砂糖が大量に使われている飲み物や食べもの、アルコール類に手を伸ばす。
  8. 落ち込んだり、不安感から喫煙や消費、薬に走る。
  9. 外へ出ると冬の風や雨が冷たく感じ、いらいらして車に急ぐ。

上の例のすべてに対して、肉体・生気体・精神体・知性体に起こる連鎖反応を分析することができます。上の数例は、肉体から連鎖反応が始まります。2、7、9です。数例は生気体の衝動から始まります。1、4、8です。その他の例は精神体と知性体から始まります。3、5、6です。動きはほとんど即座に発生し、習慣的なものです。これらの体の背後に、純粋意識、霊体、真我、観察者が存在しています。これは何も行いませんし、感じませんし、発言もしません。ただ観察しているだけです。あなたの人生において唯一常に存在しているものです。真珠を一つに束ねている紐のようなもので、めったにその存在には気づきません。これは、出来事のすべて、我々の人生の細かい部分のすべてを観察しています。最近の科学的な実験や量子力学によって示されているように、脳も含めて、もっと濃密な体からは独立した存在です。深い瞑想によって、気づいているということに気づくようになり、肉体・生気体・精神体・知性体の動きに対して観察者の視点を養うようになるにつれて、過去の思考・行動・発言の結果であるカルマが減少し、瞬間瞬間「真我を実現した状態」に留まるようになります。好み、欲望を持たず、落ち着き、気づきを保ち、新たなカルマを生み出すような行動を避けるようになります。その結果、カルマを生み出すことになる習慣が徐々に力を失っていきます。

第三段階:生気体をエゴから引き離す
生気体を統御するための第三段階は、生気体を、エゴとエゴの欲望や好みを満足させることから、霊体の意思を満たすこと、つまり真理、善、美への向上心へ忠実であろうとする時に始まります。これが最も長く最も困難な段階になります。なぜならこの段階では、エゴイズムから生じる欲望や無意識的で習慣的な感情や衝動をすべて生気体から浄化しなければならないからです。エゴ、つまり肉体、感情、欲望、精神的・知的な動きと一体になってしまう習慣は、人間の性質の根本の部分です。ほとんどの霊的教えの目標である、重大な欠陥のある人間性を超えるだけではなく、変容させ、完全にすることがタントラ、つまり成就を成し遂げた存在方の教えの目標です。シッダたちのようになろうと求めることによって、なろうとするものに集中することができ、浄化しなければならないもとと一体になってしまうことを避けることができます。この浄化の過程はタパスと呼ばれ、この言葉は「火で真っ直ぐにする」ことを意味します。これは自らに課す課題であり、自らの人間性にある癖、限界を意志力を使って浄化しようとする試みがすべてこれに当てはまります。まずは宣言から始まります。たとえば、マインドを統御しようとするなら、「私はマインドの動きを観察して楽しみます」と宣言するかもしれません。食に関する癖を克服したいのなら、「私は肉体的に飢えを感じた時にのみ食べ、最初に満腹を感じた地点でやめます」。恐れを克服したいのなら、「恐れ(あるいは緊張、自信のなさ、不安、疑念、臆病など)を感じたらいつでも、深呼吸をし、集中し、落ち着く」。そして次に、欲望の対象に直面したり、マインドが習慣的に散り散りになる時は意志の力を働かせなければなりません。抵抗には辛抱強く、多くの場合、それを克服できるように高次の力の支えを求めながら耐えなければなりません。

クンダリニー・ヨーガ:生気体を統御するために我々の潜在的な力・意識を目覚めさせる
クンダリニー・ヨーガを開発したヨーガ・シッダは、我々の潜在的な力・意識であるクンダリニーを利用するための最も効果的な方法を提供してくれています。アーサナ、プラーナヤーマ、マントラ、瞑想、内面での礼拝中に、プラーナを方向づけ、生気体上のエネルギー経路からチャクラへと流すことによって、生気体は内なる神性、そして完全体を顕現させることに仕えるようになります。我々には、力を与え、導き、鼓舞してくれるすばらしいクリヤー・ヨーガの技法、シッダの詩的な著作、ババジやシッダたちという見本があります。明確な意図を持ち、意志の力を働かせ、神の導きと支えを求めることによって、我々の人生、エゴイズムから生じる恐れ、その他同類の否定的な感情、そして欲望を駆逐し、生気体を統御することが必ずできます。


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